モーラー奏法で基本となる『回転』について解説いたします。
モーラー奏法は、ドラムの演奏の際に、直線的な動きではなく、円運動、つまり、回転の動きを利用しドラムの演奏を行います。
ただ、スティックが円運動を行うわけではなく、肩の回転、腕の回転、手の回転、スティックの回転と動作の基本が回転運動をもとに行われます。
ドラムという楽器は、身体から直結に近い楽器ですので、身体の動きの理にかなった奏法を利用する必要があります。
人体は直線的な動きでは身体への負担が多く、身体自体を矯正しながら動作を行わないといけません。
ドラム演奏に必要なのは「どんな演奏にも耐えられる強靭な体」ではなく、「曲に合った音が出せる事」ですので、身体に無理なく、演奏できる奏法を選択していただければと思います。
モーラー奏法では、肩から回転し、腕、スティックへとエネルギーを伝えていきます。
※物を持って、肩をくるくる回すのとは少し違います。
肩甲骨をスライドさせるように動かすと、
それに伴い腕も回転の動きをし、スティック、スネアへとエネルギーを伝え音にします。
回転運動で演奏する利点があげます。
1. 遠心力を使うことにより、小さな力で大きなエネルギーを生む事ができます。
2. 円運動により、身体に返ってくる衝撃を逃がすことができます。
3. もっとも重要なのが、人体の構造は直線的な運動より、回転運動に向いているからなのです。
遠心力は、円の外に向かって働きます。
円の中心となる部分で少し力を加えることで、円運動は開始され、エネルギーは円弧の外側に向かって発生します。
モーラー奏法の場合、機械的な○を描くわけではなく、身体、肩、肘、手首、指先、スティック と円運動をつないでいきます。
イメージとしては、螺旋のような状態でしょうか。力の発生する場所からエネルギーの波を送るような動きです。
「波を送る」というと、叩くまでのタイムラグが非常に大きい物になってしまうという懸念があるかと思いますが、
大きな力を生む事ができる回転運動なので、運動事態は非常に小さいものでいいのです。
つまり、非常に小さな力で、速さ、音量の両方を出すことが可能なのです。
腱鞘炎になってしまったり、手に豆が出来てしまったりとドラムを演奏する上で怪我をしてしまっては音楽表現どころではありません。
脱力やグリップとも関係はしてくるのですが、ここでは円運動により力を逃がすことについて説明しましょう。
図のように直線的にスティックが動くという事は、スティックを通して打面に加えられた力は、反発力が発生し、そのままスティックに返ってきます。
更に、連打をする為にスティックに力をくわえた場合、先に加えた力にプラスされるため、かなりの高負荷エネルギーが発生すると考えられます。
それが手に返ってくると...痛いですね...
つまり、円運動を行うことで、直線的に返ってくる「衝撃」を逃がしているわけです。
また、その逃がしたエネルギーを次の動作に使用します。
その為、脱力状態でも高速のスティックワークが可能となるのです。
いかがでしょう?ちょっと学問的な感じがして楽しくないですね(笑)
上記の衝撃の逃がし方でも、やはり回転運動で無いと、身体に帰ってくる負荷が大きい事がわかると思います。
さらに、直線的な動きについて!!
右図のように、「腕」をまっすぐ伸ばして下さい。
次に、その伸ばした先の「手」を上下に動かしてください。
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はい!!いまゆっくり動かしている方、
もっともっと「素早く」動かしてください。
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「身体」に返ってくる反動はいかがでしょうか?
結構『キツイ』と思いますがいかがでしょう?
それが『直線的な動き』です。
※屈伸運動での演奏時の動きです。
さて、まっすぐ伸ばした腕を少し緩めて、『子供がダダをこねるように』 素早く「手」を上下させて見ましょう。
※ちょっと、動きの説明が下手なので、近日中に動画をアップします。
手の軌道を見ていただいてわかるように、直線的な動きではなく、円運動(円弧を描くような動き)になっている事がわかると思います。
そして、身体への反動も少なくなっているのが確認できると思います。
上記の衝撃を逃がすのと同様に、身体から発生するエネルギーも身体に戻ってくるのではなく、上手く"外"へ逃がしてるわけですね!!
そして、逃がす 『エネルギー』の行き場所は??
音 に繋がるわけですね!
音に繋がる事を体感いただければ、もっと理解が深まると思うのですが、
これは実際のスタジオでの音を聞いていただかないと説明が困難です。
是非、『ワークショップ』:『セッション』『ライブ』に起こし下さい!!
アップの為、肩が切れてしまっていますが、注目していただきたいのは「手の甲」
肩の回転が無いと「手の甲」はこのように動きません。
※「動かせない」と言った方が正しいですね。
スティックに回転運動を与えるには、手も回転する必要があい、手を回転させるには、腕を回転させる必要があり、腕を回転させるには、肩を回転させる必要があります。
★外回転と内回転について★
上の動画を見ていただいてわかるように、一個で回転といっても、「一定方向に回転し続けているわけではない」のがわかりますね。
「外回転」と「内回転」を利用します。
外回転:身体の外側に向かって円運動を行う回転運動です。
内回転:体の内側に向かって円運動を行う回転運動です。
どのような動きかについては動画をご参照ください。